2006/10/23

陰謀

□ 出典

『ちぐはぐな部品』角川文庫、2006年


□ あらすじ

ある動物園で、1頭のゾウ象が飼われていた。
そこにいつの頃からか、ハトの群れが住み始
めた。見物人がゾウに投げ与えるエサのおこ
ぼれにありつけるからだ。
けれども、ハトにはこの境遇がだんだん面白く
なくなってきた。群れの中から、ゾウに一泡拭
かせて惨めな立場に追い落としてやろうという
声が上がり始めた。そしてついに、ある陰謀を
練り上げ、成功させるのだが・・・。


□ 感想(未読の方はご注意!)

中学・高校時代の私は、自分のことを棚に上げ
て、やたらと学校に不満を持っていました。私
の通っていた学校は、敏腕な校長が1代で築い
た進学校で、あまりに個性的なところも不満の
種でした。友人とは事あるごとに、学校への不
満を打ち明けあっていました。
卒業後10年近くを経て、改めて振り返ると苦笑
するばかりです。今では、私が極めて優れた方
針に基づく恵まれた教育環境の下で6年間を過
ごせたことに感謝しています。各メディアでも取
り上げられる機会の多くなってきた学校ですが、
なるほどなぁと思います。
見物人がゾウに投げ与えるエサのおこぼれに
預かってのんきに暮らしていたハトも、やがて
自らの惨めな立場に気が付き、その不満の矛
先をゾウに向けます。ゾウをけしかけて暴れさ
せ、人間にやられる様を見て、笑ってやろうと
いう陰謀を企みます。ひとのよいゾウはまんま
とこの罠にはまってしまい、命を落とします。け
れども、激しい生存競争に晒されることとなっ
たハトたちもまた、死んでしまいました。
中学や高校に上がると、自分の性格や適正が
だんだんと固定化されてきて、理想とのギャッ
プという残酷な現実に直面します。その理想と
現実の溝を埋めるべく努力を重ねたり、または
うまく気持ちに折り合いを付けていくというのが
発達課題というものなのかも知れませんが、
現実に打ちのめされると、なかなか直視する
のは難しいと思います。したがって、気持ちが
落ち着くまで不満をどこかへぶつけるというの
はある意味、健全なことなのではないでしょう
か。
しかし、いい歳の大人が同じことを考えていた
ら、ちょっと問題ですね。酔って会社や政治へ
の不満をぶちまけ、翌日はけろっとしているの
ならかわいいもんですが。ハトのように陰謀を
練り始めたら、危ない危ない。

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